【小説感想】『坂の上の雲(7)』司馬遼太郎
第7巻に副題を与えるとすれば、「戦争の本質とは何か」だ。
ドイツ軍人のクラウゼヴィッツは戦争を、「政治におけるとは異なる手段を持ってする政治の継続にほかならない」と説いた。奉天会戦も、日本海海戦も政治の継続の一環だ。
司馬は、戦争が政治の一環であることの証左を積み重ねていく。
クロパトキンは、終戦後のポジションを憂いて大敗戦をさけ、撤退を繰り返した。作戦参謀の松川は、児玉が政府に講話を促すことを、本来軍人のしごとではない、と批判したが、児玉はそれを分からずやの兵隊と一蹴する。
これらは、余談として本文に挟まれている訳ではなない。戦争は政治の継続の一環であることを示す、本巻の主題たる部分だ。登場人物達の心情に、戦争論理を組み込む司馬の手口は、まるで子供に薬と混ぜたジュースを飲ませるかのように巧妙だ。
戦争は政治の継続の一環だ。
故に、奉天会戦が終わっても戦争は終わらない。この政治を着地させるために、なおバルチック艦隊は東へと進み続ける。
次巻はついに日本海海戦、そして完結が待つ。