daibook’s blog

読んだ本の感想を書きます。Amazon Kindle Unlimitedを中心に利用していますが、その他の本についても書いていきたいです。

【小説感想】『坂の上の雲(6)』司馬遼太郎

6巻は、”余談の司馬”の真骨頂だ。
巻の約半分が、奉天作戦と関係の無い余談で占める。本筋には関係ないが、こういったバラバラのパーツを複合していくことがこの大作を楽しむコツのひとつだ。なぜこうも余談を挟むのか、私なりの解釈はあるが、全巻の総括に後回しする。

さて、余談というのは2章「黄色い煙突」3章「大諜報」を指す。
2章では、前半、ロシア帝政の愚かさを繰り返し、後半、戦争技術について説明する。非日常の戦争を読み理解することは難しい。技術を理解することは、その感情的背景を理解することと同じように重要だと思う。迫る艦隊決戦への理解を助けるコラム的位置づけであろう。
3章では、ロシアを内部から崩壊させんとする明石元二郎の活躍を描く。現在価値で400億円以上にものぼる活動資金を持ってヨーロッパに渡らせた日本政府の視野の広さと、作戦の大雑把さが面白い。また明石に撹乱されるロシアをまで調査する、司馬の徹底的な姿勢は、この小説を読むありがたさを再度認識させる。

7巻は遂に奉天会戦へと続く。

 

新装版 坂の上の雲 (6) (文春文庫)

新装版 坂の上の雲 (6) (文春文庫)