daibook’s blog

読んだ本の感想を書きます。Amazon Kindle Unlimitedを中心に利用していますが、その他の本についても書いていきたいです。

【小説感想】『春琴抄』谷崎潤一郎

谷崎潤一郎の傑作の1つ、春琴抄。盲目の師と、弟子の禁断の恋愛を描いた傑作。『細雪』では人物の気持ちを文中にこれでもかと詰め込んだ谷崎だった本作ではーーーと思ったなどの表現はなく、第三者しかもその後世の人間が思いめぐらせる形でしか書かれないそ…

【小説感想】『坂の上の雲(8)』司馬遼太郎

最終巻は、日本海の陰鬱な湿気と、爆薬、甲板の焦げる匂いに満ちている。漂う緊張感は、これまでの比にならない。第6章の副題「死闘」が示すとおり、戦局の一手一手に、国家の命運がかかっているからだ。 ここまで来ると、冗長な説明は不要に思う。列強の干…

【小説感想】『坂の上の雲(7)』司馬遼太郎

第7巻に副題を与えるとすれば、「戦争の本質とは何か」だ。 ドイツ軍人のクラウゼヴィッツは戦争を、「政治におけるとは異なる手段を持ってする政治の継続にほかならない」と説いた。奉天会戦も、日本海海戦も政治の継続の一環だ。 司馬は、戦争が政治の一環…

【小説感想】『坂の上の雲(6)』司馬遼太郎

6巻は、”余談の司馬”の真骨頂だ。巻の約半分が、奉天作戦と関係の無い余談で占める。本筋には関係ないが、こういったバラバラのパーツを複合していくことがこの大作を楽しむコツのひとつだ。なぜこうも余談を挟むのか、私なりの解釈はあるが、全巻の総括に後…

【小説感想】『坂の上の雲(5)』司馬遼太郎

203高地の攻防戦、バルチック艦隊の多難な航海を経て、日露戦争最大の会戦である奉天会戦へと物語は進む。 203高地の幕引きは、戦争が、その勝敗に関わらず、終わってみれば如何に無益な所業であるかを感じさせる。休戦を迎えた人々に、民族同士のわだかまり…

【小説感想】『坂の上の雲(4)』司馬遼太郎

遂に日露戦争が幕を開ける。第4巻は、過言を恐れず言えば、日露戦争を理解するための伏線的な立ち位置の巻であるように思う。 純粋な事実の連続たる戦史を、小説として成り立たせるとき、その一部は説明的にならざるを得ない。そういった前提をもって、この…

【小説感想】『坂の上の雲(3)』司馬遼太郎

いよいよ日露戦争の色濃い情勢となった第3巻。戦争に対する準備とは、軍備の充実に留まらない。それに付帯する金策や政治的駆け引き、組織改革まで含まれる。戦争を前に、日本全体が武者震いする様子を精緻に描く。 戦争は、一兵卒の集合によって行われるが…

【小説感想】『坂の上の雲 (2)』司馬遼太郎

病床にある子規と、海外へ羽ばたく秋山兄弟が対照的に描かれる。第2巻のテーマを与えるとすれば、「ナショナリズムの発揚」だ。本書を読み読者は、列強のアジア政策に対するナショナリズム発揚の様子を追体験する。明治の時代は、資本主義の最も醜い部分が発…

【歌詞感想】『宿命』Official髭男dism

「心臓から溢れ出した声に・・・」、とのっけから尖った言葉で私の心を突き刺してくる。お盆の暑さに負けて、テレビを見ているだけなのに、この曲を聞くとまるで甲子園に立たされているかのような錯覚を覚える。 たかがスポーツ、勝った負けたなんてその後の人…

【小説感想】『坂の上の雲 (1)』司馬遼太郎

維新から日清、日露戦争にかけて活躍した四国松山出身の若者たち、秋山好古、真之兄弟と正岡子規を描いた歴史小説。第一巻にテーマを与えるとすれば、人生の選択だ。革命直後の日本で、賊軍として扱われた藩の若者達は、無差別階級の新たな世の中に希望を求…

【小説感想】『命売ります』三島由紀夫

日常に嫌気が差した男が、自らの命を売る稼業をする話。突飛なことで誰かから承認を得ることに焦がれる主人公は、さながらイタズラ動画で再生数を稼ぐYouTuberを見ているように感じる。自分を無価値だと設定することによって、全ての自由が得られる、という…

【小説感想】ヒッキーヒッキーシェイク 

引きこもり達が、1人の詐欺師に導かれながら、自らの人生に向き合っていくお話。引きこもりを克服するということは、必ずしも自分を意図的に変えることではない。彼らは他者と向き合うことを通じて、自分自身へも向き合い、変化していく。 他者を通じて自分…

21世紀型の人材戦略とはどんなものか。大前研一ビジネスジャーナル No.16(人材戦略は「軽く・薄く・少なく」 ~20世紀の人材観が会社を滅ぼす~) 

KindleUnlimitedから。 評価:★★★☆☆ 異質な時代、21世紀に旧時代の人事戦略を持つことへの危険性を示唆する1冊。組織ありきの人事ではなく、業務ありきの人事であるべきとの主張に共感する。今後は、より自分の能力を具体的に示すことが出来る人材でないとい…