daibook’s blog

読んだ本の感想を書きます。Amazon Kindle Unlimitedを中心に利用していますが、その他の本についても書いていきたいです。

【小説感想】『坂の上の雲(8)』司馬遼太郎

最終巻は、日本海の陰鬱な湿気と、爆薬、甲板の焦げる匂いに満ちている。漂う緊張感は、これまでの比にならない。第6章の副題「死闘」が示すとおり、戦局の一手一手に、国家の命運がかかっているからだ。

 

ここまで来ると、冗長な説明は不要に思う。列強の干渉に耐え、ナショナリズムに芽生えた日本がその矢先、国家自体を失いかけるというアクシデントに対して打ち勝った。ひとつの大きな物語が終わりを迎えた。

 

エピローグで、物語は松山の3人に帰還する。維新戦争の敗戦国に生まれた彼等は、時代の荒波にもまれながら、新たな国家の誕生にその一生を捧げた。青春を味わうことなく、日本の礎となった先人に、畏敬の念は絶えない。

 

新装版 坂の上の雲 (8) (文春文庫)

新装版 坂の上の雲 (8) (文春文庫)