【小説感想】『命売ります』三島由紀夫
日常に嫌気が差した男が、自らの命を売る稼業をする話。突飛なことで誰かから承認を得ることに焦がれる主人公は、さながらイタズラ動画で再生数を稼ぐYouTuberを見ているように感じる。
自分を無価値だと設定することによって、全ての自由が得られる、というのは幻想だ。
その果ては自由に死ぬ権利すら、与えられない。
三島由紀夫が書く大衆小説とは、ドラマティックな構成に計算された美しい物語であったが、その実は社会を斜に見るような皮肉を含む物語であって、決して後味の良い物語とは言いきれない。