daibook’s blog

読んだ本の感想を書きます。Amazon Kindle Unlimitedを中心に利用していますが、その他の本についても書いていきたいです。

【小説感想】『坂の上の雲 (1)』司馬遼太郎

維新から日清、日露戦争にかけて活躍した四国松山出身の若者たち、秋山好古、真之兄弟と正岡子規を描いた歴史小説
第一巻にテーマを与えるとすれば、人生の選択だ。
革命直後の日本で、賊軍として扱われた藩の若者達は、無差別階級の新たな世の中に希望を求め上京する。
諸分野の日本一になることが、万人の願いであったこの時代においては、道を決めればあとはそれを極めるのみ、というシンプルな図式が成り立っている。従ってここでは道そのものを如何に選ぶかが問題となる。
好古は経済事情という必然性によってその道を選んでゆき、漠然とした身の上にある真之や子規とは対象的な存在である。必然、読者は後者2人のやり取りに心を寄せることになるであろう。
真之は本性の直感力を活かし、軍人になることを決意した。子規は文学という、当時としては不良な道を自らの活路と見定めた。かくして2人の物語は大いなる方向性を持って進み始めたのだったが、一方、それは同郷の友人と別れることを含んだ決意となり、淡い感傷を帯びた、物語のハイライトとなっている。

 

我々の生きる現代は、誰もが良とする生き方と言うものは無くなってしまった。それでも、内省し、探求する努力をも無くしてしまってはいけないだろう。

恐らくは、誰しもが夢見る安直な成功は無く、選択には喪失を伴う。その意味で、彼らと我々は何ら変わり無く、親近感を持って今後の物語を読み進められるように思う。

 

新装版 坂の上の雲 (1) (文春文庫)

新装版 坂の上の雲 (1) (文春文庫)