daibook’s blog

読んだ本の感想を書きます。Amazon Kindle Unlimitedを中心に利用していますが、その他の本についても書いていきたいです。

【小説感想】『命売ります』三島由紀夫

日常に嫌気が差した男が、自らの命を売る稼業をする話。突飛なことで誰かから承認を得ることに焦がれる主人公は、さながらイタズラ動画で再生数を稼ぐYouTuberを見ているように感じる。
自分を無価値だと設定することによって、全ての自由が得られる、というのは幻想だ。
その果ては自由に死ぬ権利すら、与えられない。


三島由紀夫が書く大衆小説とは、ドラマティックな構成に計算された美しい物語であったが、その実は社会を斜に見るような皮肉を含む物語であって、決して後味の良い物語とは言いきれない。

 

命売ります (ちくま文庫)

命売ります (ちくま文庫)

 

 

【小説感想】ヒッキーヒッキーシェイク 

引きこもり達が、1人の詐欺師に導かれながら、自らの人生に向き合っていくお話。引きこもりを克服するということは、必ずしも自分を意図的に変えることではない。彼らは他者と向き合うことを通じて、自分自身へも向き合い、変化していく。

他者を通じて自分を認識する、禅問答のような構造で物語は進行する。とはいえ、語り口は心地よい軽さで、時折ふっと心を着くような表現に出会う。

清々しさと、温かさに満ちた小説だった。