daibook’s blog

読んだ本の感想を書きます。Amazon Kindle Unlimitedを中心に利用していますが、その他の本についても書いていきたいです。

【小説感想】『坂の上の雲 (2)』司馬遼太郎

病床にある子規と、海外へ羽ばたく秋山兄弟が対照的に描かれる。第2巻のテーマを与えるとすれば、「ナショナリズムの発揚」だ。
本書を読み読者は、列強のアジア政策に対するナショナリズム発揚の様子を追体験する。明治の時代は、資本主義の最も醜い部分が発露した時代であった。
現代を思う時、明治と同様な不穏な雰囲気を感じるのは私だけだろうか?
情報を制する巨大企業が、各国の税金を逃れて世界の人々を支配し、それに連なる列強はこぞってブロック経済政策を推進している。
秋山兄弟は戦争体制の構築に、子規は俳句という国民文化に人生を捧げた。
平成が終わり、令和になっても、本当に個人だけの幸福を追求するだけで良い時代が続いていると思っていて良いのだろうか?
時を越えて、深刻な問いを投げかけられる思いのする第2巻だった。

 

新装版 坂の上の雲 (2) (文春文庫)

新装版 坂の上の雲 (2) (文春文庫)

 

 

 

【歌詞感想】『宿命』Official髭男dism

「心臓から溢れ出した声に・・・」、とのっけから尖った言葉で私の心を突き刺してくる。お盆の暑さに負けて、テレビを見ているだけなのに、この曲を聞くとまるで甲子園に立たされているかのような錯覚を覚える。

たかがスポーツ、勝った負けたなんてその後の人生に何の意味もない、そんな風に思えない。
「宿命」がそこにあるように感じる。

魂の限り声を枯らして叫ぶ若者たちは宿命に立ち向かう挑戦者だ。そこに青春なんて生ぬるい言葉は要らない。

『宿命』は、立ちはだかる宿命を糧にしてさえも、前へと進み出そうとする、強靭な精神を讃える歌だ。私達大人は宿命から逃れる巧みさを得た代償に、その貴重なエンジンのかけ方を忘れ去ってしまっていないか、今こそ「宿命」を燃やし、暴れ出す時ではないか!


Official髭男dism - 宿命[Official Video]

【小説感想】『坂の上の雲 (1)』司馬遼太郎

維新から日清、日露戦争にかけて活躍した四国松山出身の若者たち、秋山好古、真之兄弟と正岡子規を描いた歴史小説
第一巻にテーマを与えるとすれば、人生の選択だ。
革命直後の日本で、賊軍として扱われた藩の若者達は、無差別階級の新たな世の中に希望を求め上京する。
諸分野の日本一になることが、万人の願いであったこの時代においては、道を決めればあとはそれを極めるのみ、というシンプルな図式が成り立っている。従ってここでは道そのものを如何に選ぶかが問題となる。
好古は経済事情という必然性によってその道を選んでゆき、漠然とした身の上にある真之や子規とは対象的な存在である。必然、読者は後者2人のやり取りに心を寄せることになるであろう。
真之は本性の直感力を活かし、軍人になることを決意した。子規は文学という、当時としては不良な道を自らの活路と見定めた。かくして2人の物語は大いなる方向性を持って進み始めたのだったが、一方、それは同郷の友人と別れることを含んだ決意となり、淡い感傷を帯びた、物語のハイライトとなっている。

 

我々の生きる現代は、誰もが良とする生き方と言うものは無くなってしまった。それでも、内省し、探求する努力をも無くしてしまってはいけないだろう。

恐らくは、誰しもが夢見る安直な成功は無く、選択には喪失を伴う。その意味で、彼らと我々は何ら変わり無く、親近感を持って今後の物語を読み進められるように思う。

 

新装版 坂の上の雲 (1) (文春文庫)

新装版 坂の上の雲 (1) (文春文庫)

 

 

【小説感想】『命売ります』三島由紀夫

日常に嫌気が差した男が、自らの命を売る稼業をする話。突飛なことで誰かから承認を得ることに焦がれる主人公は、さながらイタズラ動画で再生数を稼ぐYouTuberを見ているように感じる。
自分を無価値だと設定することによって、全ての自由が得られる、というのは幻想だ。
その果ては自由に死ぬ権利すら、与えられない。


三島由紀夫が書く大衆小説とは、ドラマティックな構成に計算された美しい物語であったが、その実は社会を斜に見るような皮肉を含む物語であって、決して後味の良い物語とは言いきれない。

 

命売ります (ちくま文庫)

命売ります (ちくま文庫)

 

 

【小説感想】ヒッキーヒッキーシェイク 

引きこもり達が、1人の詐欺師に導かれながら、自らの人生に向き合っていくお話。引きこもりを克服するということは、必ずしも自分を意図的に変えることではない。彼らは他者と向き合うことを通じて、自分自身へも向き合い、変化していく。

他者を通じて自分を認識する、禅問答のような構造で物語は進行する。とはいえ、語り口は心地よい軽さで、時折ふっと心を着くような表現に出会う。

清々しさと、温かさに満ちた小説だった。

 

21世紀型の人材戦略とはどんなものか。大前研一ビジネスジャーナル No.16(人材戦略は「軽く・薄く・少なく」 ~20世紀の人材観が会社を滅ぼす~) 

KindleUnlimitedから。

評価:★★★☆☆

異質な時代、21世紀に旧時代の人事戦略を持つことへの危険性を示唆する1冊。組織ありきの人事ではなく、業務ありきの人事であるべきとの主張に共感する。今後は、より自分の能力を具体的に示すことが出来る人材でないといけない。自己の業務棚卸し、自己分析が必要と感じた。

 

"大前研一ビジネスジャーナル No.16(人材戦略は「軽く・薄く・少なく」 ~20世紀の人材観が会社を滅ぼす~) (大前研一books(NextPublishing))"(good.book編集部, 大前 研一 著)

こちらから無料で読み始められます: http://a.co/9zMRg18